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ロンドンの甃 消えたガールフレンド

© 産経新聞

先週末、ロンドンに住む香港人の友人宅に招待された。2020年に英国に移住したその男性は民主活動家で、何度か取材したことはあるが、自宅を訪れたのは初めてだった。

彼はいつもと変わらない笑顔で迎えてくれたが、すぐに「異変」に気づいた。彼と同棲(どうせい)していた香港人のガールフレンドが見当たらないのだ。しばらくして他の香港人の友人も自宅に集まり、夕食を作ったり、オンラインゲームを楽しんだりした。彼はその間、ガールフレンドが自宅にいない理由を語らなかった。

その後の夕食中。彼はビールを飲みながら、ようやく真相を話し始めた。「彼女は香港に帰ったんだ。香港に残したお父さんが重病になったと連絡があって…」。彼の表情から笑顔が消え、涙がこぼれ落ちた。

彼女も民主活動家で香港に戻れば、香港国家安全維持法(国安法)違反容疑で逮捕される恐れもある。家族の看病のため危険を顧みずに帰国を決めた彼女を引き止められなかったという。

「もう2度と彼女に会えないかもしれない」。彼はそうつぶやいた。食卓を一緒に囲んだ私や友人たちは何も言えず、ただ黙って話を聞いていた。

中国共産党が統制を強化する故郷の状況に、香港人が翻弄され続けている現実を目の当たりにしたような気がした。(板東和正)

産経新聞より転用

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