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首相、攻守使い分け 初の国会論戦 維新に防衛踏み込む 立憲には社会保障で配慮

 高市早苗首相は4日、就任後初の国会論戦に臨んだ。政権は高支持率でスタートしたが、衆参両院で少数与党という苦境に変わりはない。立憲民主党など野党には社会保障政策などで一定の配慮を示しつつ、与党・日本維新の会にはタカ派色の強い「高市カラー」の政策を前面に押し出した。4時間の論戦からは、攻守を使い分けざるを得ない首相の不安定な政権基盤も浮き彫りとなった。  

物価高対策を含む2025年度補正予算案の年内成立を最優先課題と位置付ける首相が、野党の協力を得る「呼び水」になると踏んだのは「給付付き税額控除」だ。

■聞く姿勢を強調  首相は代表質問で立憲の野田佳彦代表が実現を求めたのに対し「税、社会保険料負担で苦しむ中低所得者の負担を軽減する。早期に制度設計に着手する。野党の皆さまとも丁寧な議論を進めたい」と応じた。首相は野田氏に向かって、野党との「議論」という言葉を10回以上繰り返し、各党の主張を聞く姿勢を強調した。  

女性初の首相就任と直後からの外交ウイークをへて、報道各社の世論調査で内閣支持率は70%前後と高水準を記録する。それでも国会では衆参両院で過半数を持たず、野党の協力がなければ予算案や法案を通せない。  

特に補正予算案審議で野党の協力が得られなければ政権運営は行き詰まる。自民の閣僚経験者は「支持率が高いと言って好き放題はできない。首相もわきまえている」。  

一方で首相は連立合意した維新の「望み」もかなえなければならない。代表質問では保守強硬派という自身のカラーを強調し、維新の藤田文武共同代表の希望に応えた。  

所信表明演説では具体的に触れなかった防衛装備移転について「防衛装備移転三原則運用指針の見直しを早期に実現するべく検討を進める」と踏み込んだ。維新との連立合意では、殺傷能力の高い武器を含む防衛装備品の輸出条件を大幅に緩和すると宣言し、装備移転は「わが国にとって望ましい安全保障環境を創出するための重要な政策的手段だ」とも強調した。

■自民重鎮危機感  首相はさらに、防衛費の前倒し増額や「国旗損壊罪」制定のほか、持論の憲法改正について「時代の要請に応えられる憲法の制定は喫緊の課題」と語り、9条改正への意欲も表明した。外国人政策でも「一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱に国民の不安や不公平感が生じている」と改めて主張。この日に合わせて外国人の規制強化を議論する関係閣僚会議の初会合を開いたこともアピールした。自民重鎮は「『右』と『右』が一緒になると、こうなるというのがよく分かる」と危機感を募らせた。  

維新の藤田氏は代表質問で、自民と維新は「本格的な改革保守連立政権だ」と自賛し、その後の会見でも「われわれは改革のアクセル役を自任している」と述べ、連立合意の実現を加速させると宣言。一方の立憲の野田氏は「中道路線の立ち位置から政権と対峙(たいじ)していく。連立の枠組みが変わり、アクセルが二つになった政権に対し、ブレーキ役を果たす」と表明した。首相が問われているのは、そのアクセルとブレーキのはざまで「いかに多くの党をつなぎ留めるか」(自民中堅)だ。  

首相の答弁には、具体的な道筋が乏しいものも多い。維新との連立条件の一つだった社会保障改革には、医師会が反発する医療費削減など自民にとって厳しい内容も含まれる。衆院議員の定数削減は自民内にも反対論がくすぶるが、維新幹部は早急に与党協議をスタートさせると勢いづく。  

定数削減について首相は代表質問で「重要な課題だと認識しており、取り組む決意だ」と語ったものの、具体的な方向性は「コメントを差し控えたい」と述べたのみだった。首相周辺は「高い支持率も、すぐ急降下する可能性はある」と警戒する。

北海道新聞より転用

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