大の里が5度目V!“天敵”豊昇龍を決定戦で破り横綱として初優勝「大の里時代」到来の第一歩
- スポーツ
- 2025年9月29日

<大相撲秋場所>◇千秋楽◇28日◇東京・両国国技館
横綱大の里(25=二所ノ関)が“天敵”の横綱豊昇龍に雪辱し、2場所ぶり5度目の優勝を決めた。
取組前まで豊昇龍には、1つの不戦勝を除くと1勝6敗。合口の良くない相手に本割で敗れて13勝2敗で並び、嫌な予感が漂ったが、優勝決定戦で雪辱を果たした。
千秋楽の横綱同士の対戦で優勝が決まるのは、12勝2敗の相星決戦となった20年春場所の白鵬-鶴竜戦以来、5年半ぶり。さらに横綱同士による優勝決定戦は、09年初場所の朝青龍と白鵬(優勝は朝青龍)以来、実に16年ぶりだった。互いに横綱として初優勝を懸けた、注目の取組を制した。苦しみながらも“天敵”を乗り越えたことで、いよいよ「大の里時代」の到来を予感させた。
今場所前は、調整遅れを漂わせたこともあった。初日を9日後に控えた今月5日、横綱審議委員会による稽古総見では、豊昇龍、大関琴桜との申し合いで3勝8敗と振るわなかった。ところが翌6日、千葉・松戸市の佐渡ケ嶽部屋で行われた、二所ノ関一門の連合稽古では、琴桜と三番稽古を行い、計15番で12勝3敗。劇的に調子をV字回復させた。
この稽古後に大の里は「昨日(稽古総見)があまり良くなかった分、しっかりと反省して、今日(連合稽古では)できたかなと思います。今日は自分自身、少し危機感を感じて稽古に挑めたと思うので、それがよかった」と、自身も復調を感じていた。
さらに後日、打ち明けていたことがあった。「道中とか、いろいろと考えて、もう1度、同じことをしないようにして、大関との三番稽古に挑めた。稽古総見では(上半身と下半身のバランスが)バラバラだった。体の感覚は覚えてはいたので。それが生きていた」。頭の中で不調の原因を整理し、修正できる域に達していた。裏を返せば、横綱に求められる「心技体」のうち、技と体は常に臨戦態勢を整えていることの証明でもあった。
今場所は悪癖のまともな「引き」を封印してきた。唯一、下がった11日目の小結高安戦も、回り込みながらいなし、逆襲の機会をうかがう、ただ下がっていた従来とは全く別物だった。事実、高安が一瞬の隙を見せると、即座に逆襲して快勝につなげていた。
さらに今場所はずっと見せていなかったが、新たな武器も懐に忍ばせていた。琴桜との三番稽古では、それまで、ほとんど見せたことがなかった、左を巻き替えての、もろ差しで寄り切る取組が目立った。<1>右差し、<2>左おっつけ、<3>右上手というこれまで身に着けてきた武器に、本場所では未発表だった第4の武器「もろ差し」があったことで、精神的にゆとりもできて、一段と持ち味の圧力に磨きを掛けてきた。
これで新入幕から11場所で5度目の優勝を果たした。昇進2場所目で、横綱として初優勝を飾ったのは、白鵬や朝青龍、千代の富士ら、通算優勝20度を超える「大横綱」も通ってきた道。すでに初の年間最多勝を確定させ“相撲界の今年の顔”となった。来年以降も長く、同タイトルを取り続ける気配がすでに漂う。大横綱への第1歩を踏み出した。
日刊スポーツより転用
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