イスラエル首相は米参戦引き寄せに奏功、イラン攻撃継続の意向 消えない泥沼化の懸念
- 国際
- 2025年6月23日
イスラエルのネタニヤフ首相は22日、対イラン攻撃は「核と弾道ミサイルの脅威除去」が目標だと改めて強調し、達成時期は「とても近い」と述べた。米軍の参戦を実現し、単独では困難とされたイラン中部フォルドゥの地下深くにある核施設攻撃にこぎ着けたことへの自信がうかがえる。
ネタニヤフ氏は治安対策に敏感で、イスラエル政界屈指の対イラン強硬派だ。バイデン前米政権など米民主党政権が掲げた「対話による解決」には一貫して反対してきた。
トランプ米政権も4月にイランと直接協議を開始したが、イスラエル軍は今月13日にイランへの大規模攻撃に着手。米軍の参戦により米・イランの協議継続は不可能になった。ネタニヤフ氏はこの点も「成果」ととらえているとみられる。
パレスチナ自治区ガザでのイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘は、ハマスからの人質解放の障害になっているとして国内では反発もある。それとは対照的に、イスラエルのシンクタンクが行った世論調査で対イラン攻撃の是非を質問したところ、攻撃を「支持」するとの回答が7割に上った。
ネタニヤフ氏については2023年10月のハマスによるイスラエル奇襲を防げなかったとして、責任追及を求める声が国内で大勢を占める。首相の座を追われかねない国会選挙を回避するため、ガザやレバノンで戦争を継続しているとの批判も絶えない。対イラン攻撃はネタニヤフ氏の政治的延命にも役立っている。
いくつかの利益を手にしたネタニヤフ氏だが、今後も順調に事が進むかどうかは不透明だ。焦点の一つはイランとの交戦を巡る「出口戦略」。同氏は22日、「必要以上のものを得ようとすることはしない」とする一方で、交戦は当面続くとの見通しを示した。
ネタニヤフ氏はガザの戦闘では「ハマス壊滅」と「人質全員の解放」を目標に掲げたが、戦闘開始から1年半以上が経過した現在もハマスのメンバーは戦闘を展開しており、今月中旬までにイスラエル軍の兵士430人が死亡した。散発的だがガザからイスラエルへのロケット弾攻撃も起きている。
ガザに続いてイランでの交戦が泥沼化すれば、国内経済がさらに疲弊する公算が大きい。ネタニヤフ氏は19日、イスラム教シーア派の法学者によるイランの政教一致体制について、「(体制の崩壊は)ゴールではない。結果としてはあり得る」と述べた。
イランはガザにおけるハマスと異なり、広大な国土に9千万人以上が住む多民族の国だ。ネタニヤフ氏が体制転覆に動くようなことがあれば、適切な撤収時期を見失いかねない危うさもはらんでいる。
産経新聞より転用
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