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PTAの学校寄付5.9億円 24年度94自治体 公費補完の側面も

 PTAから学校に対する寄付について毎日新聞が政令市や中核市など計109自治体にアンケートしたところ、2024年度に94自治体に4508件、総額5億9414万円相当の寄付がされていたことが判明した。ただし、実態を把握していない自治体が八つあり、実際にはより多くの寄付があるとみられる。図書やテントなどの備品から消耗品、エアコンなどの設備に至るまで幅広い物品や現金が寄付され、PTAが教育現場を支えている実態が浮き彫りになった。

 毎日新聞は6~9月に政令市、県庁所在地、中核市、東京23区の計109自治体の市区教育委員会にアンケートを実施。所管する公立小中学校、高校、幼稚園などの学校園がPTAなど保護者会組織から受けた寄付の件数や内容、金額などを尋ねた。107自治体から回答があった。  

学校教育法は、学校の管理運営経費は設置者が負担すると定める。地方財政法は国や自治体が住民に寄付を割り当てて強制的に徴収することを禁じる。一方、自発的な寄付は禁止されておらず、文部科学省は12年、寄付を受ける場合は自治体の規定に従って手続きをするよう通知している。  

アンケートによると、1件以上の寄付を受けたのは94自治体。所管する学校園のうち約2割にあたる1808学校園が寄付を受納した。寄付相当額の合算が最も高かったのは、さいたま市の5437万円(1141件)で、川崎市4012万円(110件)、広島県福山市2934万円(279件)、名古屋市2132万円(45件)が続いた。東京都世田谷区と豊島区、大阪市、長野市、大阪府八尾市の5自治体はゼロと答えた。  

寄付を「把握しておらず回答できない」などと答えたのは福島県いわき市、群馬県高崎市、千葉県船橋市、同柏市、東京都中野区、同八王子市、山口市、松山市の8自治体。「各学校で対応している」との理由が多かった。  24年度までの5年間にPTAからの寄付について3自治体が手続きに不備があるなどとして監査で指摘を受けていた。  

◇備品、設備など幅広く  物品の内訳は、花や苗などが613件と最も多く、金額の幅は550円~26万円だった。次いで図書類が403件、1360円~147万円。テント(256件、4235円~233万円)、椅子(136件、1万円~221万円)、エアコン・空調機(64件、4万円~376万円)やカーテン(60件、1万円~129万円)なども多かった。門扉(164万円)の寄付を受けた小学校もあった。100万円以上の現金、印刷機のインキ、シールといった消耗品もあった。  

PTAからの寄付に関してどのような規定を設けているかも尋ねた。空調などの設備や机・椅子などの備品、紙やチョークなどの消耗品など学校教育活動に最低限必要なものは公費負担すべきものとし、その水準を上回るものは寄付受け入れを可能としているケースが多かった。だが、物品を問わず受領するというケースや、公費負担に相当するものでも予算執行に時間がかかったり、寄付の申し出があったりする場合は「自発的な寄付」として受け入れるという声もあり、PTAによる寄付が公費を補完している側面も垣間見えた。【前本麻有、塩路佳子、芝村侑美、砂押健太】  

◇坂田仰・淑徳大教授(教育行政学)の話  公立学校の管理運営経費は、設置者である自治体が負担することが原則だ。だが、寄付受納できる基準がはっきりしないため、自発的な寄付は禁止されないという部分が学校現場で都合よく扱われ、公費負担相当分まで寄付される余地を生んでいる。学校は必要最低限のものは公費負担すべきだと再認識し、PTAも慣例化した寄付を見直すべきだ。

毎日新聞より転用

毎日新聞

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