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UFOキャッチャー40年の人気「1週間で景品入れ替え、全く別のゲームになる」

アームを操作して景品をつかみ取るクレーンゲーム。その代名詞ともされる「UFOキャッチャー」が今年、発売から40周年を迎えた。ゲームセンターの廃業が相次ぐ中でも、クレーンゲーム市場は成長を続けている。人気の背景を探った。

1週間で入れ替え「飽きられない」

 約350台のクレーンゲーム機を設置する大阪・ミナミのゲームセンター「GiGO大阪道頓堀本店」。明るい照明に照らされた吹き抜けのフロアには、にぎやかな音楽が流れ、連日、若者や訪日客らでにぎわう。

 9月上旬、観光途中に立ち寄った韓国人女性(35)は「ポケットモンスターなど日本の有名なキャラクターのグッズに挑戦したが、あと少しで取れなかった。何度でもやりたくなる」と笑顔をみせた。大阪府吹田市の男子大学生(21)は「デートで時々来る。いい景品がないかと見て回るだけで楽しいし、会話もはずむ」と話した。

 訪日客向けには、世界で人気の「ハローキティ」のぬいぐるみ、「推し活」の客向けにはアイドルのバッジ、プロ野球・阪神タイガースの優勝時には限定グッズ……。どんな景品を、どれくらい取りにくい場所に置くかが店側の腕の見せ所となる。店長の下斗米秀敏さん(41)は「1週間ほどで景品を入れ替える。全く別のゲームのようになるので飽きられない」と説明した。

変わる店内

 ゲーム大手セガがUFOキャッチャーを発売したのは1985年。店内の雰囲気は今とは違っていた。開発に20年以上携わる深沢光晴さん(57)は「薄暗いゲームセンターの片隅に置かれていた」と明かす。

 78年発売の「スペースインベーダー」に続き、「パックマン」(80年)、「ドンキーコング」(81年)と、ビデオゲームの名作が次々に誕生。ゲームセンターは全国に広がった。ただ、画面が見やすくなるなどの理由から、店内の照明は薄暗く、客層は男性に偏っていた。

 老若男女を問わず楽しめるゲーム機にしようと作られたのがUFOキャッチャーだ。女性にも親しまれるよう外装をピンクに。目線の高さでプレーできるよう構造を従来の横型から縦型に。これにより景品のショーケースのような見栄えになり、ゲーム初心者らを呼び込んだ。

売上高2倍に

 「取る楽しさに、集める楽しさが加わった」(深沢さん)のも大きい。お気に入りのグッズでデコレーションした「痛バッグ」作りのために通うなど、熱心なコレクターは少なくない。

 実は、風俗営業法により、ゲームセンターで景品を提供することは禁止されている。クレーンゲームの景品は射幸心をあおらない範囲で、例外的に認められた経緯がある。

 90年に景品の上限額が200円から500円に引き上げられ、「アンパンマン」など人気キャラクターのぬいぐるみを提供できる余地が生まれた。段階的に引き上げられた上限額は、2022年には1000円に。精巧なフィギュアや巨大なぬいぐるみも登場し、ファンの裾野を広げた。人件費の安い中国や韓国の工場が生産を支えた。

 日本アミューズメント産業協会によると、ゲームセンターの店舗数はこの10年で半減した。一方、クレーンゲームなど景品を獲得する「プライズゲーム」の23年度の売上高は3643億円と10年前の2倍近くに達し、全ゲームセンターの売上高の約7割を占める。

 クレーンゲームを研究するフランスの社会情報学者のボトス・ブノワさんは「海外では景品の規制もあり、クレーンゲーム産業は大きく育たなかった。アニメなど娯楽業界の発展、海外生産、景品の上限緩和の三つが掛け合わされ、日本は独自の発展を遂げた」と指摘する。

読売新聞オンラインより転用

読売新聞オンライン

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