石破首相、衆院解散を本格検討も実現にハードル…「居座り」批判への対抗手段狭まる
- 政治・経済
- 2025年9月5日

自民党内で臨時総裁選の実施を求める動きに対し、石破首相(党総裁)が取り得る対抗手段が狭まっている。「居座り」批判の拡大を抑え込む有効なカードは見つからず、本格的な検討に入った衆院解散・総選挙も、実際に踏み切るには複数のハードルがある。
「やりたくはないが、総裁選になるくらいなら解散する」
首相は、2日に臨時総裁選実施の可否を確認する党内手続きが始まったことを受け、複数の自民議員にこう語った。
衆院解散は、首相のみが決定する権限を持つ。憲法7条は、内閣の助言と承認による天皇の国事行為の一つとして衆院解散を規定しており、過去にも首相が有利な時機に解散を仕掛ける根拠となってきた。
通例では、内閣が解散を閣議決定した後、衆院議長に解散詔書の発出を伝達し、本会議で議長が詔書を朗読する。ただ、過去に例はないが、学説上は国会閉会中でも解散は可能とされる。1986年に中曽根康弘首相が衆参同日選に踏み切った際には、野党の反発で本会議が開かれず、議長が応接室で与党の代表らを前に詔書を読み上げた。
解散すれば、衆院議員全員が失職し、政治空白にもつながるため、政府・与党内から反対が起きる例もある。解散の閣議決定には全閣僚の署名が必要になるが、2005年の郵政解散では、小泉純一郎首相が解散に反対した農相を罷免(ひめん)し、自ら兼務した上で閣議決定した。
石破首相がこのタイミングで解散を判断すれば、多数の閣僚の反対が予想される。連立を組む公明党も早期の解散に反対の立場だ。小泉農相は4日、記者団から衆院解散の可能性を問われ、「普通に考えれば、このような局面になって、解散を念頭に(自民の参院選総括で)『解党的出直し』という言葉を使うことはない」と述べ、否定的な見方を示した。
首相周辺では、解散した場合、派閥の政治資金問題で不記載があった議員や、総裁選の前倒しを求めた議員を公認せず、対立候補を立てる案も取り沙汰されるが、多数の刺客候補を短期間に用意するのは困難だ。
臨時総裁選は党則に基づいて手続きが進められており、首相が恣意(しい)的に回避すれば、強い批判を招くことは避けられない。伊吹文明・元衆院議長はSNSで「政党内の抗争での解散等は前代未聞で、国会の権威のためにも暴言・妄言は慎むべきだ」と苦言を呈している。
読売新聞より転用
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