「PARM」はなぜ売れ続ける? 原点は“2つのアイス”にあった
- 政治・経済
- 2025年8月13日

森永乳業が展開するバーアイス「PARM(パルム)」の売れ行きが好調だ。2024年度には年間売上が200億円に達した。シリーズ全体の年間出荷本数は約3億7000万本(2024年度)で、発売初年度の2005年と比べて出荷金額は10倍以上に拡大している。なぜ、これほどまでに支持され続けているのだろうか?
成長の背景には、まず市場全体の拡大がある。日本アイスクリーム協会によれば、2024年度のアイスクリーム販売金額(メーカー出荷ベース)は6451億円で過去最高を記録した。夏の猛暑に加え、暖房の効いた室内で食べる「冬アイス」など、季節を問わない消費スタイルの広がりが追い風となった。
猛暑が続くと「ガリガリ君」のようなさっぱり系アイスが好まれるかと思いきや、実際にはPARMのような濃厚系アイスの需要も伸びているという。森永乳業のマーケティング担当者によると、猛暑が続くことで冷房が効いた室内で長時間過ごすことが多くなり、「アイスクリームやアイスミルクのような濃厚な味わいのものを選ぶ傾向が出てきた」のだそうだ。
加えて、これまでのチョコレート菓子への需要が、夏の暑さによって冷たいチョコ系アイスであるPARMに流れているのではないかと同社は分析している。
ある2つのアイスから誕生したPARM
PARMが発売されたのは2005年。当時は、アイスといえば子どものおやつという印象が強かったという。しかし少子高齢化が進む日本市場では、子どもだけをターゲットにするには限界がある。そこで森永乳業が目を付けたのが、「大人が自分へのごほうびとして楽しめるアイス」だったという。
同社には既にカップタイプの「MOW」や、一口タイプの「ピノ」があったことから、新たにバーアイスの開発に着手。伸びしろがあると見込まれた「チョコレートバーアイス」市場を狙った。
開発チームが重視したのは、従来の「パリパリのチョコでコーティング」したタイプとは異なる食体験だった。食べる際にチョコがはがれ落ちたり、口の中で先にアイスだけが溶けたりしないような商品を目指した。
その際に参考にしたのが、「ピノ」の“チョコとアイスの一体感ある口溶け”と、「MOW」の“コクとキレ、組織の滑らかさ”だ。これらを融合させた、“いいとこ取り”こそがPARM誕生の鍵となったのだ。
開発にあたっては、チョコは人肌の温度で溶けるように設計。バニラアイスの部分は乳業会社ならではの知見を生かし、チョコとの相性を重視して成分を調整した。
一貫したブランド戦略でロングセラーに
森永乳業の担当者は、PARMの人気の理由について「ブランドとしての世界観をぶらさなかったこと」と語る。20年に渡って、「大人のための上質なバーアイス」というブランドイメージの維持に努めてきたそうだ。
実は、発売当初から爆発的にヒットしたわけではない。発売後1~2カ月は売り上げが伸び悩み、製造ラインが止まる日もあったという。店頭での試食販売やテレビCMなどを通じて少しずつ認知を広げてきたそうだ。
「PARMを立ち上げた時には、工場の製造ラインが1つしかありませんでした。今はPARMのラインで埋められていて感慨深いです」と担当者は振り返る。
2024年3月にはリニューアルを実施。「バニラを強化」した結果、売り上げは前年比117%(1本入り、6本入りともに)と伸長した。
2022年以降は、トレンドや季節に合わせた新しいフレーバーの展開にも注力している。通常の購入層は30代以上の女性が中心だが、季節限定フレーバーは若年層や男性にも好評だという。
新フレーバーの開発にあたっては、流行の味を安易に取り入れるのではなく、「ひとひねり加えた、こだわりを感じられる味」を追求している。一方、6本入りのマルチパックでは、家族全員で楽しめるフレーバーを展開しているそうだ。
PARMの今後について担当者は、「アイスを買いにきてたまたまPARMを選ぶのではなく、PARMを食べたくて売り場に来てもらえるようなブランドを目指したい」と意気込んだ。
ITmedia ビジネスオンラインより転用
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