「あんぱん」岩男役 濱尾ノリタカ「2日水飲まず」飢餓を演じる「体重10キロ落とした」
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- 2025年6月19日
NHK連続テレビ小説「あんぱん」(総合、月~金、前8・00)が戦争編に突入している。戦地・中国に送られた柳井嵩(北村匠海)の前に同級生の田川岩男が再登場。蘭子(河合優実)へのプロポーズなどコミカルなシーンの多かった岩男だが、少年・リンとの交流で成長した姿を見せる中、悲劇に見舞われる…。戦後80年の節目を迎え、朝ドラとして異例の戦時描写が話題となる中、岩男を演じた俳優の濱尾ノリタカ(25)は何を思っていたのか。体重を10キロ落とすなど役作りに身をささげた日々を明かす。
丸刈り頭に岩男の余韻が残っていた。トレードマークの太い眉がより強調されて見える。「正義の味方みたいな役じゃないのに、愛していただいた。純粋に熱意と誠意をもってひたすらに向き合っていたので、岩男のいとしさが伝わったのかなと思うと、役者をやってて良かったなって本当に思います」。濱尾の口調は熱かった。
ガキ大将として登場し、濱尾が演じるようになると、蘭子への唐突な求婚と散りっぷりが話題を呼んだ。純粋でどこか抜けている材木屋のボンボン。憎めない人物像で心をつかみ、Xで応援タグ「#俺たちの岩男」が立ち上がったほどだ。
蘭子に振られる撮影の後、監督からやなせたかしさんの絵本「チリンのすず」を渡され、「岩男にとって大事な作品だから読んでおいて」と告げられた。その時まで再登場することは知らなかったという。 兵士役を演じるため、慶大卒の学者肌は役作りを理詰めで徹底。資料館で当時の日記を読み込み、書籍を精読、スマホには台本の余白を自分なりに考えて大量のメモを打ち込んだ。のちの「アンパンマン」へとつながる戦地での「飢餓」は、重大なテーマ。濱尾も役にその身をささげ、減量は10キロに及んだという。
「嵩と再会する時代にはまだ食料があったので、ちょっと痩せているくらいにして体重を2、3キロ落としました。そこからどんどん食べ物がなくなっていく。一番痩せているシーンでは2、3日ご飯を食べず、当時はお水もなかったので撮影2日前の夜に飲んだのが最後。最終的に10キロくらい痩せていました」
戦争への意識が高まる中で芥川賞作家の朝吹真理子氏と知り合い、印象的な話を聞いた。朝吹氏が芸術家の田名網敬一氏に戦争の話を聞いた際、「体験したことのない人には分からない世界なんです」と言われたエピソードを伝えられ、はっと気付かされたという。
「僕は岩男を演じる上で、戦争を分かってないといけないと思っていたんですけど、分かるわけがない。分からないなりに現代を生きる自分がひたすらに考える。その向き合い方が一番真摯(しんし)なのかもしれないと思いました。僕のように岩男が、戦争について考えるきっかけになったらいいなと思います」 もともとは嵩の弟・千尋役のオーディションに参加した。戦後80年の節目となる朝ドラ。強い思いで臨み、舞台設定を調べて当時の服をイメージした古着にオールバックの髪形で参加した。容姿を作り込んでオーディションを受けるのは自身初のことだった。
千尋役はかなわなかったが、脚本の中園ミホ氏が濱尾のために岩男というキャラクターを創出。濱尾も勝負の役に向け、事務所に所属してから書きためていた演技の反省ノート10冊を読み返して原点回帰し、「自分の中ではこれまでで一番大きいターニングポイント。俳優としても人間としても考え方を全部洗い直しました」と振り返る。
岩男はどんな存在だったか、率直に聞くと「大恩人です」と答えた。
「頭で考えるところからスタートするんですけど、最後には岩男の思ってることが勝手に出てくるようなところまでできた。初めての体験でした。自分の考え過ぎちゃう性格に自己嫌悪するところもあるんですけど、役者としても人としても、岩男に救われました。『大げさだろ。主演してから言えよ』と思われるなぁとも思いつつ、役に大きい小さいはないと思うので」と感謝は尽きない。今でも心の中に岩男が生き続けている。
◇濱尾ノリタカ(はまお・のりたか)1999年11月26日生まれ、東京都出身。高校まで競泳に打ち込み、全国大会に出場。慶大在学中にドラマ「仮面ライダーリバイス」で本格デビュー。主な出演作はドラマ「マイ・セカンド・アオハル」「笑うマトリョーシカ」など。今年、「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で大河ドラマデビュー。身長185センチ。血液型A。
デイリースポーツより転用
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