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「ブライト企業」光と影 熊本県 働きやすさ“お墨付き” 虐待、パワハラ疑惑も

 熊本県が、働きやすい企業として“お墨付き”を与える熊本独自の「ブライト企業」制度。5年目を迎え認定企業は約300社となり、求職者が企業を選ぶ指標の一つになっている。ただ、業務に問題があったり、従業員から不満の声が上がったりしている企業もある。

菊池市で老人ホームなどを展開する医療福祉系企業は、2018年度にブライト企業となった。しかし2月、市や県の立ち入り調査を受け、入居者に対する虐待があったと認定された。複数の元職員によると、同社の給料は介護業界では比較的高いが、入居者への対応は一部の幹部の指示が絶対だったという。

元職員らは「幹部は現場の声を聞かず、職員間の申し送りもない。働きやすい職場ではなかった」と打ち明ける。40代の男性社長は「情報共有が足りなかった部分はあるが、市の指導も受けて改善中」とした。

17年度にブライト企業となった熊本市北区の輸入車販売会社には、「ブライトだから」と応募してきた求職者もいたという。ただ今年、役員らによるパワハラ疑惑が社内で問題化。複数の従業員が「役員による従業員への暴言や暴力があった」と証言する。

 同社は「一部の幹部に問題的な行為があったが、パワハラには当たらないと認識している」とする。弁護士も交えて調査し、近く従業員に結果を公表する予定だ。

ブライト企業の審査項目は、社員の離職率が業種平均を下回るかどうかや平均勤続年数、決算状況など20項目。企業から提出された書類による審査が原則で、実際の従業員からの聞き取りなどは実施していない。

県労働雇用創生課は「数字で見えない部分までは審査できないのは確かだ」と認める。19年度からは制度を一部見直し、社員1人当たりの残業時間や有給休暇取得率、パワハラ防止対策の有無など、より「働く側の視点」を重視した項目を追加した。

労働現場の問題に詳しい熊本学園大の遠藤隆久教授(労働法)は「大学生は、ブライト企業を、長時間労働や違法残業がない優良企業だと理解して就活している」とした上で、「県は書類審査だけではなく、できるだけ企業に出向いて従業員に聞き取り調査するなど事実確認する責任がある」と指摘する。(太路秀紀)

◇ブライト企業  若者の県内就職促進や県全体の労働環境向上を狙って県が2015年度に始めた制度。過酷な労働を強いるブラック企業の対極にある企業を表す県の造語で、「正社員1人当たりの実労働時間数」や「県内求職者の正社員雇用者数」、「経営者と全従業員との情報共有・意見交換機会の有無」など20項目で審査してきた。県労働審議会の審査を経て認定し、3年ごとに更新。現在の認定企業は287社。

(2019年9月18日付 熊本日日新聞朝刊掲載)

熊本日日新聞

 

 

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