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投資知識ない若者がターゲット 「サブリース」悪用の勧誘広がる

 不動産の転貸契約「サブリース」(借り上げ家賃保証)を悪用した投資の勧誘が広がっている。新たな顧客層を取り込むために投資知識のない若者がターゲットになっており、知らぬ間に不正な契約を結ばされた顧客が住宅ローンの一括返金を求められる恐れも出ている。【山本有紀、松本惇】

「年収250万円台から大家さんになれます」。あるサブリース業者のホームページには魅力的な言葉が並ぶ。全国展開する不動産会社の営業担当の社員だった男(49)はこの業者と連携して顧客にマンションを販売し、そのマンションを第三者である入居者に貸すサブリース契約を結ばせていた。顧客は金融機関から住宅ローンを借り、入居者からの賃料収入をローンの返済に充てる仕組みだ。

ところが、この売買には不正な二重契約があった。この不動産会社によると、元社員は正式な契約書とは別に、偽造印を使って契約額を多く見せかける偽の契約書を作成。これを使って顧客に住宅ローンを借りさせた。この行為は、有印私文書偽造などに問われる可能性が高い。不動産会社は「顧客も二重契約を知っていた可能性があるのではないか」とみているが、複数の顧客によると、二重契約については知らされなかったという。

元社員らへの取材によると、二重契約で得た差額は架空会社に入金された後、入居者がいなくても家賃を支払う保証金としてサブリース業者に渡ったほか、顧客を紹介したブローカーにも支払われた。顧客には「必要な手続き」として明確な説明はせず、複数の書類にサインさせていた。元社員らが関わった同様の契約は約150件。毎日新聞が入手した資料では少なくとも十数件について、1件当たり200万~700万円が架空会社に渡っていた。

不正はもうひとつあった。融資に利用させた固定金利型住宅ローン「フラット35」は本来、投資用物件には使えない。元社員は契約者に理由を告げず、住民票を購入物件の住所に移すよう指示して自己居住用に購入したように見せかけていた。

元社員は2015年ごろからこうした手法で20~30代を中心に中古マンションを売り、歩合給を増やした。毎日新聞の取材に「客の年収は平均300万~400万円。営業成績を上げるため、(収入)ピラミッドの底辺の客も囲い込みたかった。我々からすれば売れてしまえばそれでいい」と語った。外部からの通報により社内で不正が発覚し、昨年7月に解雇された。

元社員がいた不動産会社は第三者の弁護士などによる調査委員会を設置し、不正行為は元社員が単独で行ったとする報告書をまとめた。その上で、宅地建物取引業法を所管する国土交通省関東地方整備局と、フラット35を提供する住宅金融支援機構に報告した。また、二重契約の可能性を通知する文書を顧客に郵送したという。

同整備局は「報告があったかは答えられないが、一般論として二重契約は宅建業法で行政処分の対象となる『取引の公正を害する行為』に該当する可能性がある」と説明。同機構は「そうした事案について調査はしている。事実が確認できれば、顧客には融資金の一括返金を求める」としている。

◇元社員が顧客に契約させたサブリース業者の主な宣伝内容

▽年収250万円台から大家になれる

▽元手不要

▽保証人不要

▽借金があってもできる

▽家賃120%保証

▽定額20年保証

◇27歳男性「自己資金必要なく、20年間の家賃保証が購入の決め手」

大手電機メーカーに勤める男性(27)は昨年4月、元社員が勤めていた不動産会社から東京都足立区にある中古マンションの一室を購入した。取材に対して「二重契約の説明は受けておらず、知らなかった」と驚いた様子で語った。

SNS(会員制交流サイト)で知り合った女性から、投資物件を所有しているという人物を紹介され、勧誘を受けた。「直接物件を見ずにフィーリングで決めた。自己資金を出す必要がないうえ、20年間の家賃保証が購入の決め手になった」

金融機関から受けた融資は約4100万円。毎日新聞が入手した資料に書かれた正式な売買契約額は約3400万円で約700万円が架空会社に渡っていた。男性は内容をよく確認せず、求められるまま複数の書類にサインしたという。現在は家賃が振り込まれているものの「家賃保証もいつまで続くのか」と不安な表情を見せる。

国民生活センターは「『何も手間がかかりません』と言われ、業者にお任せになっている人が多い。ローンによる不動産投資は自己資産による投資とリスクが異なることを知ってほしい」と注意を呼びかけている。

◇サブリース

業者が物件を所有者から借り上げ、入居者の有無にかかわらず一定の賃料を保証して支払う仕組み。所有者が入居者と直接契約する賃貸借契約より賃料は少なくなるが、安定した収入が見込めることや管理の手間がかからないとされる。昨年以降、サブリースでシェアハウスを購入した人へのスルガ銀行による不正融資が発覚したり、サブリースで事業を展開していたレオパレス21で施工不良が明らかになったりするなどトラブルが頻発している。

毎日新聞

 

 

一言コメント
ウマい話には裏がある。

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