データミックスは企業間取引・企業経営に必須なビジネスニュース、政治・社会ニュースを配信しています

<はれのひ騒動は氷山の一角?>なぜ「メルカリ」は問題が乱発するのか?

振袖の販売やレンタルなどを手がけていた「はれのひ」が1月8日の成人式当日に事業を停止し、晴れ着も社長も行方がわからなくなっている今回の騒動。

計画倒産や社長の海外逃亡説まで囁かれるなど、混乱を極めている。さらに「メルカリ」などのフリマアプリで振袖の大量出品が発覚し、「はれのひ」関係者が客から預かっていた着物を転売しているのでは? といった疑惑まで持ち上がっている。

メルカリといえば、昨年、現金売買などの違法取引や詐欺的出品、ジョークを含めた根拠不明な怪しげ取引が乱発され、その運営が問題となったことは記憶に新しい。

昨年の騒動の際に「安心・安全な取引のために」と題して規制・監視強化を表明したものの、今回の「はれのひ」事件がきっかけとなり、再びメルカリの運営に注目が集まっている。

振袖大量出品と「はれのひ」の関係性は明らかになっておらず、現段階での転売疑惑はネットを中心とした憶測でしかない。しかしながら、メルカリがそのような疑惑の土壌になってしまうこと自体に、その運営に危うい「ネットビジネスの闇」を感じる。

今回の騒動では「規約違反疑惑」が2ヶ月以上も放置されている(当然、他の事例も放置されている)。SNSユーザーが見つけて騒いでいるような出品を、200名以上のスタッフが24時間365日稼働しても探知できなかったのだろうか。もしそうであれば、メルカリにはほとんどチェック機能も運営管理もできていないことになる。事件との関連性は不明とは言いつつも、こういった騒動がとりだたされることにこそ、メルカリの危うさがある。この「危うさ」は、他のフリマアプリと比べてもメルカリは突出しているように筆者は感じる。

例えば、メルカリと併用されることの多い楽天が運営するフリマアプリ「フリル」では、利用登録には氏名と住所が求められ、匿名による商品の授受もできない。一方で、メルカリは、利用登録はニックネームでも可能だし、配送も匿名が可能だ。

一見すれば瑣末な違いにも感じるが、このわずかな差によって、利用の敷居は大きく変動する。少なくとも、登録や配送に記名が求められるだけでも、利用者の緊張感は一気に高まる。もちろん、そういったルール作りが不正利用を抑止し、信頼性を高める一方で、ユーザーにとっては「煩わしさ」となって、利便性を低下させ、ユーザー離れを引き起こす。

あらゆるネットサービスにおいて、信頼性の向上と利便性の向上はいわば諸刃の刃である。しかし、その絶妙なバランスを調整することが、ネットビジネスでは何よりも重要であり、近年のネットサービス、ネットメディアでは最も求められていることだ。そしてそのことをメルカリの運営者たちが知らぬはずはないだろう。

しかしながら、もしそれを理解した上で、ユーザーと売り上げの拡大のために見て見ぬふりをしているのであれば、20年前のインターネット黎明期の頃の「アングラサイト(地下サイト)」のように、メルカリが単なる「闇市」と化し、違法売買や脱法取引の温床になってゆく危険性すら内包しているように思う。

藤本貴之[東洋大学 教授・博士(学術)/メディア学者]

一言コメント

フリマアプリが隆盛を極める今日、運営者たちのモラルが試されているのではないか。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

※日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。